気温が低くなってくるとバラにとっても快適な時期。夏バテしていた株も元気さを取り戻し、小さな黄緑色の新芽も健やかに伸びてきます。その柔らかい新芽や蕾を狙う虫も出てきますし、この涼しさだからこそ発生しやすい病気もあります。こまめにお庭やベランダを歩いてみて、ひどくなる前に早期発見に努めましょう。
20~25℃ぐらいの気温で発生しやすい病気です。
黒星病の何が怖いかというと、その広がりを止めないと生長に大切な葉が落葉してしまうということです。葉が少なくなれば光合成も出来ません。
秋はどうしても黒星病が出やすいタイミングですので、100%発生させないようにするということは、プロの私でも難しいことなのです。ですが、出来る限り葉を残し光合成ができるように病気の予防、もしかかってしまった場合はそれ以上広がらないように早期の治療を行って下さい。(「予防薬」、「治療薬」がありますので薬剤散布をしてください)
黒星病とは…
カビの一種で、葉の表面に胞子が付き葉の中に入り込んで成長します。長雨が続きそうな時に予防として薬剤散布するのが一番良いと思いますが、もし発生してしまった場合は成長の初期段階(小さい黒い斑点が出た時)で薬剤散布することが大切であり、成長が進むと薬剤散布しても効果が少ないので早期発見と薬剤散布が重要になります。
薬剤としては、ダコニール・サプロールなどをお勧めします。
秋バラが咲き始めるこの時期に注意するのが、タバコガという蕾や花を食べる虫です。タバコガは蛾が飛んできて卵を産み孵化するので、特に予防薬というものはありません。タバコガが付いたら薬剤散布をしますが、体が大きいので薬では効かないこともありますので、まめに見回って早期に発見し、物理的に取り除くのが一番です。
※詳しくはブログ記事…「Q.蕾に穴が空きました。虫がいるのでしょうか? A.「タバコガ」かもしれません」をご覧ください。
黒点病でもないのに、葉がどんどん黄色くなり落葉していく。なんとなく株全体が元気でない。
そういうときは一度地中を確認してみましょう。鉢の場合はそのままスポッと引っこ抜く。地植えの場合は根の周りを少し掘ってみてください。
白根が食べられ根鉢が崩れていたら大変です。幼虫が見つかれば捕殺してください。地植えは全ては掘れないので、根が食べられていた兆候があれば殺虫剤を用法を守りジョウロなどで潅水してください。コガネムシの幼虫に根がどんどん食べられてしまうと、最悪の場合は枯れてしまいます。
元気のない株で、9月に確認を行っていなかった場合は、今一度確認してみてください。
予防薬…ベニカXガード粒剤、オルトランDX等
※詳しくはYouTube動画…葉が黄変?株が不調?コガネムシの食害かもしれません をご覧ください。
色が魅力的です。気温が下がり、色が濃くなるため「春バラより秋バラが好き」という方も少なくないかと思います。
また、春の花は2月に強剪定(本剪定)して一斉にグーンと伸び、ほぼ同時期に沢山咲きますが、半月ほどで終わってしまいます。一方秋の花は、四季咲き品種であたたかい地域、かつお手入れを適切にすれば3ヶ月ぐらい楽しむことができます。状況やお手入れが良ければ、12月ごろまで繰り返し咲く四季咲き品種もあり、春バラより長く楽しめることがあります。
それぞれの季節でバラを楽しまれて下さいね。
バラに付く虫は沢山いますが、ここで取り上げる害虫はタバコガといいます。
とくに、秋の開花時期に多く発性し、大切な蕾を食害します。
タバコガ類は鱗翅目(りんしもく)ヤガ科の蛾の仲間です。ヤガ科は蛾の中でも大きな科ですが、その中にはヨトウガの仲間も含まれています。
タバコガ類の中で特によく見られるのはオオタバコガとタバコガです。特にオオタバコガはタバコガよりも幅広い作物を食します。バラにやってくるものの多くがオオタバコガです。
タバコガ類は蛾ですが、成虫・幼虫ともに昼行性です。産卵は5~11月の間に行われ、その中でも8~9月が多いです。そのため、その卵が孵化して幼虫成長中の9~10月により蕾に被害が出るのです。
1990年代から多く発生するようになり、西日本を中心にトマトやイチゴ、キャベツ等の果菜類や、バラを含むキキョウやカーネーションといった花卉類に対して大きな農業被害をもたらしています。果菜類では果実に、葉物野菜では巻いている葉に、花卉類では蕾に、それぞれ幼虫が潜り込み食害します。
1匹の幼虫が、いくつもの蕾や実を食べながら渡り歩くのが特徴です。そのため、幼虫の数は少なくてもそのわりに多くの被害が出てしまいます。
また、タバコガの幼虫は食べながら内部に潜り込みます。ですので、鳥や肉食昆虫などの捕食者から狙われにくいので天敵は少なく、表にいないため薬剤が効きづらかったり発見が遅れたりします。
一度タバコガ類の幼虫に潜り込まれてしまったバラの蕾は穴が開いてしまうため、うまく開かなかったり、開いても花弁が穴だらけで見栄えのしない花になってしまいます。
タバコガの駆除に最も有効なのは「捕殺」です。捕殺とは、見つけて捕まえることです。
日頃からバラをよく観察しましょう。地道ですが、それが最も有効な手段です。
葉裏や花にタバコガ類幼虫を見つけたら必ず駆除し、蕾や芽に穴や糞を見つけたら、近くにいないかどうか、穴の開いた蕾をほぐしたりして探すことが大切です。
幸いにも毒はありませんので、毒針の心配をする必要はなく、素手で取り除くこともできます。
また、タバコガ類の卵は蕾や芽などのやわらかな先端に産みつけられるため、卵がついていないかどうかをよく観察して確認することも有効です。卵を見つけた場合、軽くこすれば取り除けます。見つけた卵にたいして、潰したり薬剤散布する必要はありません。
防虫ネットも有効ですが、野菜と違ってバラには不向きです。
薬剤散布も有効ではありますが、オオタバコガは薬剤抵抗力があり薬剤が効きにくいです。タバコガという名はタバコの葉を食べても死なない頑丈さから来ています。
薬剤に強いタバコガ類幼虫ですが、幼虫が若いうちは薬がまだ効きます。しかし成長するに従って薬剤が効きにくくなります。
若齢期は一般的な殺虫剤のマラソン、スミチオンも有効ですが、老齢期では、フェニックス、ディアナ、プレオフロアブルなどの専用薬をお勧めします。
バラにつくイモムシというのはいくつか種類がありますが、今回紹介するホソオビアシブトクチバはどのイモムシなのでしょうか?
5~10月に現れます。
個体によって違いはありますが、薄茶色・グレー・ベージュのような色合いです。
模様はありますが、あまり派手ではありません。体に沿った太い線と、ところどころに白い点があります。
大きいものは8㎝の長さまで育ちます。頭の大きさに対して体が長いです。
尺を取って歩きません。イモムシらしく歩きます。
隠れ上手で、バラの枝に沿ってくっついていることが多いです。
また、フチを好むようで、葉のフチや、鉢植えの場合は鉢のフチにいる場合もあります。
動き回るよりはじっとしていることが多いです。
枝や何かのフチにいることが多いので、パッと見では見つけづらいのが特徴です。
じっとしていることが多いイモムシではありますが、育ち盛りの幼虫はモリモリ食べますので、放っておくと知らぬ間に葉っぱがなくなっていってしまうかもしれません。
また時に蕾や花弁を食べてしまうこともあります。
ホソオビアシブトクチバへの対処法としては、捕殺や薬剤散布といった一般的な防虫方法が有効です。
○捕殺
枝やフチに沿ってじっとしていることが多く、隠れ名人なのでよく探さないと見逃してしまいます。
毛や毒はないので、素肌に触れても大丈夫です。
○薬剤散布
一般的な殺虫剤が有効です。
・住友化学園芸ベニカXファインスプレー
・オルトラン
・マラソン
・スミチオン
ベニカR乳剤もよく効果がありました!…ブログ記事「スタッフが効果を実感している薬剤 ベニカR乳剤 尺取虫、チュウレンジバチ」
ホソオビアシブトクチバはチョウ目ヤガ科に分類される蛾の一種です。
ヤガ科は蛾の中でとても大きなグループで日本だけでも1200種以上が知られています。
つまり、似た仲間がたくさんいる、多様性のある科ということです。
科より細かい分類の同じ属の仲間はホソビアシブトクチバを含めて4種います。
Parallelia属
・アシブトクチバ
・タイリクアシブトクチバ
・ヒメアシブトクチバ
・ホソオビアシブトクチバ
4種は成虫・幼虫ともに見た目はよく似ていますが、幼虫の食草はそれぞれ違うので、バラにやってくるのはホソオビアシブトクチバのみです。
またホソオビアシブトクチバの幼虫はバラ以外にウバメガシ(ブナ科)、トウゴマ(トウダイグサ科)、サルスベリ(ミソハギ科)等も食べます。
ウバメガシやサルスベリはよく生垣や植栽として利用されている植物ですね。
成虫は5~10月に見られ、大きさは開張4㎝前後、
500円玉に乗せると翅ははみ出すくらいの大きさの、中くらいの蛾です。
バラの葉を食べる害虫、ホソオビアシブトクチバという蛾について紹介しました。
少々見つけにくいですが、普通の防虫方法が有効ですので、他の害虫対策も兼ねて対策しましょう。
ここ最近秋めいてきましたが、人が過ごしやすくなるということは虫も活動しやすくなるということでもあります。秋バラを楽しみたい方も多いでしょうから、病害虫対策はしっかりとやっていきたいものですね。
7月、8月は「とにかく枯れずに夏を乗り越えること」が大事で、猛暑で木が疲れ、花は小さくて見栄えがしませんでした。が、気温が下がる秋になると「バラを楽しむ」季節になります。
夏の続きで地植えでも鉢植えでも四季咲き性のバラの場合、放っておいてももちろん新芽は出ますが、咲いた後の花柄を放置したり、伸び放題の枝を放置しておくと栄養を取られたり樹形が崩れてしまいます。
これから迎える秋は、春に次いで花を楽しめる季節です。秋バラは色も深く大変魅力的に咲きますので、せっかくですのでそれを見据えてこのタイミングで一度枝を整理し、樹形を綺麗にしてあげましょう。ポイントは、元気に光合成するための葉は沢山残しながら樹形を整えることです。
温度が下がってくるとバラにとって最適な季節になりますので、根も動き出して木が活発になり新たな秋バラに向けての新芽も出てきます。それに人がお手伝い(枯れ枝を取り除いたり、形を整えたりして)あげると、10月ごろに咲く秋バラがより元気に魅力的になります。
※よくいわれる「夏剪定」について動画でお話しました。バラの夏剪定をゆったり語る 気楽に考えてね
※つるバラに関してはこちらをご参考にしてください。夏に伸びすぎてしまったつるばらの処置、基本の考え方
夏は病気も比較的出づらく、虫たちにとっても厳しい時期でした。ですが、温度が下がってくると病害虫にとっても同じく良い時期になります。人も、ちょっと涼しくなってきたなと快適に思っていると、気づけば虫に蕾をかじられていた、ということはよくあります。早期発見につとめ、害虫は付いたら殺虫剤をかけ、病気はひどくならないよう予防からも消毒・薬剤散布を心がけましょう。
病気でとくに注意するのは黒星病(秋は落葉は仕方がないのですが、光合成のために出来る限り葉を残しておきたい)、害虫は新芽を食べる芋虫系、蛾の幼虫など、要注意です。
肥料は月に一度ぐらい、適量を与えます。
葉が黄色くなってしまったと言うお客様からのお問い合わせがありましたが、よくお話をお伺いすると肥料を一度も与えたことがなかったそうです。栄養不足でも葉は黄変してしまいます。ただ、あげすぎには要注意です。
きちんとした肥培管理をすれば、それにバラは答えてくれますので日常の管理をする様心がけて下さい。
※適量の肥料、実演の動画…バラの肥料について 生産農家の考え(28:29ごろから)
今まで夏剪定というものをYouTube動画で配信してこなかったのは、それほど重要なことではないと思っていたからです。
そもそも最も重要なのは、一年のスタートである大元の冬に行う本剪定ではないでしょうか。そこからバラの1年が始まり、春に咲き終わったら剪定をし次の二番花、また咲き終わったら剪定し次の三番花、そして剪定…その繰り返しで秋まで行く訳です。
様々なメディアで「10月中旬頃の秋バラをより綺麗に楽しむために調整するテクニック」としての夏剪定が強調されているわけですが、私としては改めて強調するのではなくて、一年の流れの中で咲き終わったら剪定をするという基本の繰り返しをしていく中で、秋に綺麗な花が咲くという流れで良いと思っています。なので、「夏剪定」だけが特別なわけではないと思います。
ただ、冬の本剪定や夏剪定は、春の一番花や秋に綺麗な花を咲かせるという自然を理解したうえで行うテクニックですから、知識としては大事なことだと思っています。
四季咲きバラにおいて、開花したら剪定、開花したら剪定…その延長上で行っていれば良いだけなので、何月何日までに剪定をしなくては行けないということはありません。
四季咲き性のバラの場合、剪定してから50日位で開花します。つまり、遅く剪定すれば遅く咲きますし、早く剪定すれば早く開花します。いつごろ開花を楽しむかによって剪定時期を考えるので、いつ剪定しても良いと思います。
別の見方をすれば、いつまで暑いのか、いつごろから気温が下がるか、自然のことはわかりません。こちらが狙った通りにならないのが自然です。バラが咲きたくなったら咲きます。
ちなみに、四季咲きの一部の品種で、なおかつあたたかい地域では、12月頃まで咲くものもあります。繰り返し年に何回も咲きますので、夏剪定から●日後に秋バラが狙った通りに咲く、というよりも、自然の流れでするバラとお付き合いのする方法を私はしています。(様々な考えがありますので、ご自身に合った方法でバラを楽しまれて下さい)
一方、つるバラやシュラブ系など長く伸びる品種は、基本的には夏剪定は必要ありません。ここでいう夏剪定とは、秋の開花をより綺麗に楽しむためのテクニックですから、一季咲きが多い(秋に開花をしない)伸びる品種には不要です。四季咲き系統の品種と混同しないように気を付けましょう。
つるバラの剪定の基本的な考え方は、フェンスやアーチなど、理想の形になるまでは(覆いたいものを覆うまでの時期は)剪定せずにぐんぐん伸ばします。それまでは、花柄を取るぐらいで枝はなるべく伸ばしてあげて、形が出来上った後に不要な枝や古くなった枝を整理(剪定)してください。本格的に剪定と誘引をするのは冬に葉が落ちたころに行います。
ブログ記事…夏に伸びすぎてしまったつるばらの処置、基本の考え方
なお、シュラブローズや一部のつるバラなどでも、秋にも返り咲く品種もあります。ですが、四季咲きと同じように「夏剪定だ!」と意気込んで強く剪定すると花が咲かない場合もあるので、その品種ごとの特性をよく理解してください。品種ごとの特性をよく理解することも上達の手段です。
ちなみに、人気のピエールドゥロンサールも返り咲き性で秋にも咲きますが、開花後に強剪定をしてしまうと秋に花が咲かなくなってしまうことがあります。裏を返せば、開花後は花柄だけとるぐらいにして、あまり剪定しないのがコツです。枝が長くなり散らかるというデメリットはありますが、花数は増えます。
秋の開花を狙って調整しても、自然の中での管理なので、思い通りにならないのは当たり前です。それぞれのお住まいの環境によって、良い育て方を模索するなど正しい方向で注意を払うことが肝心です。
切る場所をあまり気にし過ぎると気疲れしてしまうので、あまり難しく考えないように楽しんでほしいと思います。咲き終わったら剪定ということを繰り返していく中で、たまたま夏剪定が強調されているものであって、気楽に考えてほしいと思います。
基本のポイントは、光合成のための葉を沢山付けながら形を整える、不要な枝はとる、ぐらいに思ってください。そして虫は早期発見につとめ、黒点病などの病気などを出させないように管理をします。夏剪定だからと特別に難しいことがあるわけではなく、基本の管理の繰り返しです。
「春や秋のバラが最も美しい」という考えはもちろんその通りですが、自然界の中で生きているバラですから、夏や冬のバラも、それなりに情緒があるものです。
夏のバラは春や秋に比べると花は小さく、日焼けして色も良くないし香りもあまりしませんが、猛暑の中頑張って生きている花もそれなりに良いものです(夏の花は小さくて可愛いという声も聞きます)。
また、冬の雪に覆われたバラも風情があります。
さらに、春の一番花では、寒さの中から育つので奇形の花を見かけることがあります。ですが、それはそれで自然の面白さを感じて楽しいものです。それぞれの環境の中でバラは順応して生きているので、そのときどきの姿は情緒があって良いものだと私は考えています。気楽に考えましょう。
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