今まで夏剪定というものをYouTube動画で配信してこなかったのは、それほど重要なことではないと思っていたからです。
そもそも最も重要なのは、一年のスタートである大元の冬に行う本剪定ではないでしょうか。そこからバラの1年が始まり、春に咲き終わったら剪定をし次の二番花、また咲き終わったら剪定し次の三番花、そして剪定…その繰り返しで秋まで行く訳です。
様々なメディアで「10月中旬頃の秋バラをより綺麗に楽しむために調整するテクニック」としての夏剪定が強調されているわけですが、私としては改めて強調するのではなくて、一年の流れの中で咲き終わったら剪定をするという基本の繰り返しをしていく中で、秋に綺麗な花が咲くという流れで良いと思っています。なので、「夏剪定」だけが特別なわけではないと思います。
ただ、冬の本剪定や夏剪定は、春の一番花や秋に綺麗な花を咲かせるという自然を理解したうえで行うテクニックですから、知識としては大事なことだと思っています。
四季咲きバラにおいて、開花したら剪定、開花したら剪定…その延長上で行っていれば良いだけなので、何月何日までに剪定をしなくては行けないということはありません。
四季咲き性のバラの場合、剪定してから50日位で開花します。つまり、遅く剪定すれば遅く咲きますし、早く剪定すれば早く開花します。いつごろ開花を楽しむかによって剪定時期を考えるので、いつ剪定しても良いと思います。
別の見方をすれば、いつまで暑いのか、いつごろから気温が下がるか、自然のことはわかりません。こちらが狙った通りにならないのが自然です。バラが咲きたくなったら咲きます。
ちなみに、四季咲きの一部の品種で、なおかつあたたかい地域では、12月頃まで咲くものもあります。繰り返し年に何回も咲きますので、夏剪定から●日後に秋バラが狙った通りに咲く、というよりも、自然の流れでするバラとお付き合いのする方法を私はしています。(様々な考えがありますので、ご自身に合った方法でバラを楽しまれて下さい)
一方、つるバラやシュラブ系など長く伸びる品種は、基本的には夏剪定は必要ありません。ここでいう夏剪定とは、秋の開花をより綺麗に楽しむためのテクニックですから、一季咲きが多い(秋に開花をしない)伸びる品種には不要です。四季咲き系統の品種と混同しないように気を付けましょう。
つるバラの剪定の基本的な考え方は、フェンスやアーチなど、理想の形になるまでは(覆いたいものを覆うまでの時期は)剪定せずにぐんぐん伸ばします。それまでは、花柄を取るぐらいで枝はなるべく伸ばしてあげて、形が出来上った後に不要な枝や古くなった枝を整理(剪定)してください。本格的に剪定と誘引をするのは冬に葉が落ちたころに行います。
ブログ記事…夏に伸びすぎてしまったつるばらの処置、基本の考え方
なお、シュラブローズや一部のつるバラなどでも、秋にも返り咲く品種もあります。ですが、四季咲きと同じように「夏剪定だ!」と意気込んで強く剪定すると花が咲かない場合もあるので、その品種ごとの特性をよく理解してください。品種ごとの特性をよく理解することも上達の手段です。
ちなみに、人気のピエールドゥロンサールも返り咲き性で秋にも咲きますが、開花後に強剪定をしてしまうと秋に花が咲かなくなってしまうことがあります。裏を返せば、開花後は花柄だけとるぐらいにして、あまり剪定しないのがコツです。枝が長くなり散らかるというデメリットはありますが、花数は増えます。
秋の開花を狙って調整しても、自然の中での管理なので、思い通りにならないのは当たり前です。それぞれのお住まいの環境によって、良い育て方を模索するなど正しい方向で注意を払うことが肝心です。
切る場所をあまり気にし過ぎると気疲れしてしまうので、あまり難しく考えないように楽しんでほしいと思います。咲き終わったら剪定ということを繰り返していく中で、たまたま夏剪定が強調されているものであって、気楽に考えてほしいと思います。
基本のポイントは、光合成のための葉を沢山付けながら形を整える、不要な枝はとる、ぐらいに思ってください。そして虫は早期発見につとめ、黒点病などの病気などを出させないように管理をします。夏剪定だからと特別に難しいことがあるわけではなく、基本の管理の繰り返しです。
「春や秋のバラが最も美しい」という考えはもちろんその通りですが、自然界の中で生きているバラですから、夏や冬のバラも、それなりに情緒があるものです。
夏のバラは春や秋に比べると花は小さく、日焼けして色も良くないし香りもあまりしませんが、猛暑の中頑張って生きている花もそれなりに良いものです(夏の花は小さくて可愛いという声も聞きます)。
また、冬の雪に覆われたバラも風情があります。
さらに、春の一番花では、寒さの中から育つので奇形の花を見かけることがあります。ですが、それはそれで自然の面白さを感じて楽しいものです。それぞれの環境の中でバラは順応して生きているので、そのときどきの姿は情緒があって良いものだと私は考えています。気楽に考えましょう。
今、皆さんが育てられている多くのバラが、園芸品種です。
野生種のバラ属は、もともと北半球にのみ分布する植物で、アジア、ヨーロッパ、北アメリカなど広い範囲で生息し、その数150~200種と言われています。
気候的には寒帯から赤道に近い熱帯地域まで、様々な環境の中で生息しています。(日本でも、野ばら、モッコウばら、ハマナスなど多くの野生種を見る事が出来ます。)
野生種とは、その環境に適応してたくましく育った品種のことで、今、皆さんが育てている園芸品種とは異なります。
園芸品種とは、育種技術により作り出された、お客様の趣向に合わせた売れる品種を指します。
なので、野生種に比べ、強健性、耐病性なども遺伝的に問題を抱えています。
連日、30度を超えるような高温多湿の環境は、園芸品種のバラにとって厳しい時期になります。とくに炎天下の鉢栽培などは余程、注意をしてあげないといけません。
(鉢栽培):鉢という限られた環境の中で生育しているので、水切れには特に注意が必要です。
日中の暑い時間帯は避け、朝晩の涼しい時間帯にあげる様にします。ホース内の水は、はじめはお湯になっているので、手で温度を確認してから行って下さい。
水やりの回数も、土の乾き具合をよく観察して、春より増やしてください。篠宮バラ園では酷暑日の鉢バラは日に3度水をあげることもあります。
灌水タイマーなどを使用することもオススメです。旅行などで何日か空けるときなどに最適です。当園でもこのようなタイマーを使用しています。(お出かけ前に機械がしっかり機能しているか確認してください。)
また当園のスタッフからは、数日不在にする場合、近所の方に水やりを頼んだり、地域のシルバー人材センターさんにお願いしている、という声も聴きます。
(露地栽培、地植え):鉢栽培程は注意を必要としませんが、1週間以上、雨が降らなかったら、夕方、陽が落ちてからたっぷり上げます。鉢栽培とは全く異なり、ホースの水をぽたぽたたらしながら、しばらく出しっぱなしにするくらいたっぷりあげましょう。地中の根がある部分の土に的確にじっくり水をしみこませるため、ぽたぽたと水を垂らすのが理想です。短い時間で大量の水を一気にあげると根の無いところにまで水が流れていき無駄になってしまいます。
なお、最近の40度近くなる気候や、地植えのスペースが狭い場合は1週間持たない場合があります。その際はもっと頻繁に水をあげてもよいでしょう。
詳しくは猛暑の水やりという動画をご覧ください。
移動できる鉢などは日差しが強いときは日陰に避難させて下さい。人間も日焼けするように、強烈な日差しが続くとバラも葉焼けします。葉の表面が黒くなったり、葉全体が黄色っぽくなるなど、元気がなくなります。葉焼けで株自体が枯れるということはありませんが、直射日光であまりに暑すぎる場合は遮光ネットなどで工夫して下さい。
また、この時期は台風がくることもありますので、倒れないような対策も場合によっては行ってください。
夏バテはストレスに有ります。夏バテしたら、バラが好む環境を作って上げてください。
具体的に表すのは難しいのですが、葉に色艶が無くなり全体的に元気が無い様子です。人も元気がないと見た目で解るものです。
Q.夏バテしたら水や肥料は上げ過ぎない方が良いと聞きました。なぜですか?
バラに限らず、人でも夏バテしているときは、安静にして回復を待ちますよね。弱っているときに高カロリーのビフテキやらテンプラなどは受付ないのと一緒です。バラも当然生き物です。
根は植物にとっての生命線です、根腐れを起こさないように注意してあげて下さい。
撮影しているのは5月~6月ですが弱った株の再生の記録がありますのでよろしければご参考にしてください。
瀕死苗復活の記録24年5月~
夏は病害虫にとっても過酷な季節で、被害の発生が少ない時期です。なので、多くを散布する必要はありません。
それでもどうしても必要な場合は濃度を低くし、高温時は控えましょう。
こちらの記事も参考にしてください。バラの病害虫と対策
控えた方が無難です。
肥料を上げる、栄養を上げると言うようで、一見良い様に思われますが、夏は忍耐の時で、栄養成長する時期ではありませんから必要ありません。それよりも、肥料過多による根焼けなどのデメリットを考えなくてはいけません。
肥料は9月以降の生育の時期にあげるのがベストです。
なぜなら、春、秋の気候を好むバラにとって過酷な真夏の環境は大げさに言えば生命を維持できるか否かそんな厳しい環境なのです、特に鉢栽培において特に重要になってきます。お客様の日々の管理がバラの生死を握っていると言っても過言ではありません。
強剪定は控えて下さい、葉焼けの原因となります。バラに限らず、植木などでもしてはいけません。
これは、強剪定をすることによって、今まで懐のなかのあまり陽の当たらなかった葉が強剪定された為に、いきなり強い日差しを浴びます。今まで丁度良い影になっていた葉が突然30度を超す日差しを受ければ葉焼けを起こすのは当然で、下手をすると枯らしてしまうかもしれません。
そもそも、夏は強剪定する時期ではありません、2月いっぱいまでの休眠期に行う作業です。
夏はバラにとって過酷な季節です、絶対にしないで下さい。特に植え替えは枯らす覚悟が必要です。
鉢増しの作業は春と秋の生育期が適しており、ましてや植え替えの作業は根を触るので、根へのダメージが少ない冬の休眠期に限られます。
夏は、植え替えや、鉢増しの作業をする(根に刺激を与える)時期ではありません。
※鉢増し…根鉢(鉢の形に固まった土)を崩さずに、一回り大きな鉢に土を追加して植える作業。
※植え替え…根鉢を崩して根を出し、土を新鮮な土に入れ替える作業。鉢の大きさは変えずに、古い土から新鮮な土に入れ替える。
この夏を越すことができたご褒美に、秋にはきれいな花を咲かせてくれるはずです。水やりの頻度が増えるなど、皆様も大変な季節かと思いますが、ご無理のないように園芸を楽しまれてください。
00:00最近暑いですね
01:48直射日光、暑さについて
03:35水やりについて
04:20反射防止について
05:30薬剤散布について
06:28花について
07:31花後の剪定について
09:39熱中症に気を付けましょう
00:00厳しい暑さ
00:57鉢栽培
03:03タイマー式自動灌水
14:39タイマーとの組み合わせ
16:44購入時の注意点
19:26ホースの注意点
22:07夏の地植えの水やり
25:10水鉢を作るのも一つ
26:25地植えの水やり実践
30:09夏のご褒美が秋バラです
毎年夏に「以前購入したつるバラがとても元気が良く、すごい勢いで伸びています、どうしたらよいのでしょうか?」とご質問をいただきます。
理想の形(フェンスにしたい、アーチにしたいなど)になるまでは、そのまま伸ばして誘引してください。だいたい、2~3年はかかります。それ以降、もう理想の形が出来上がったら、不要な枝は落としてください。そのあたりを詳しく説明いたしました!
※脚立とバリカンの使用には自己責任で十分ご注意ください。
この虫は、アミガサハゴロモ類の幼虫です。
アミガサハゴロモの仲間の幼虫はどれも似た姿をしていますが、近年特に市街地でよく目にするようになったものは「チュウゴクアミガサハゴロモRicania shantungensis(Chou&Lu,1977)」という外来のハゴロモです。
そもそもハゴロモとは何でしょう。
あまり聞き馴染みのない方も多いかもしれません。
ハゴロモはカメムシ目(半翅目)に含まれる昆虫です。
大きさは1㎝未満のものが多く、触ったり驚いたりするとピョンッと消えたかのようにジャンプするのが特徴的です。
カメムシ目の中でも、特にセミに近い仲間です。
もし興味があったら、ハゴロモの顔や体を拡大して見てみてください。セミのような姿形をしています。
セミに近い仲間ですが、他にもアワフキ・ツノゼミ・ヨコバイ・ウンカとも分類上近い仲間です。
☆チュウゴクアミガサハゴロモ
近年急拡大しているのがチュウゴクアミガサハゴロモです。
2015年に大阪で発生が確認されて以来、現在では関東以西の本州・四国・九州の広い範囲で生息確認されています。
この記事ではチュウゴクアミガサハゴロモのことを「外来ハゴロモ」として扱います。
○幼虫
幼虫は全身が白く、白いフワフワを背負っています。
このフワフワはロウ物質でできています。
ジャンプ力を生かして飛び上がり、このフワフワで風に乗って遠くに行くことができるようです。
孵化して間もないうちの幼虫は集団生活します。
なので枝にびっしりいることがあります。
○排泄物による被害
成虫・幼虫ともに排泄物が植物に付着するとすす病を引き起こします。
特に幼虫は大量に群れていることが多いので、より病気発生の可能性を上げてしまいます。
○産卵痕による被害
外来ハゴロモの産卵痕は変わった見た目をしています。
枝に白いフワフワが擦りつけられているように見えるのです。
外来ハゴロモは産卵する時、チュウレンジのように枝の中に卵を産むため枝に切れ込みができます。さらに、幼虫が背負っているような白いフワフワでその切れ込みを覆い隠します。
なので、もし産卵痕を見つけて白いところを拭っても、中に卵があるのであまり意味ありません。
またハゴロモは細い枝に好んで産卵します。
細い枝の中に産卵されると枯れる場合があります。
以上のことから、産卵痕は見た目が悪くなるばかりでなく、樹勢を弱めてしまう可能性や枝によっては枯れます。
吸汁性害虫なのでオルトラン水和剤やベニカ水溶剤などの浸透移行性剤に効果は期待できますが、
チュウゴクアミガサハゴロモは近年侵入し広がったものなので、メーカーによる農薬などの効果がまだ確認できていません。
もし外来ハゴロモに対して殺虫剤を使用する場合は自己責任でお願いします。
山梨県からは防除対策として産卵痕のある枝は土中深くに埋めるか焼却処分するように紹介しています。
当園からは、産卵痕のある枝の廃棄と捕殺をおすすめします。
枝は焼却が一番確実ではありますが、一般家庭で焚火するのは難しいでしょうから、燃えるゴミに出すのが良いですね。
白いフワフワを背負った虫はハゴロモ類の幼虫でした。
近年、大量発生しているこの虫はおそらく外来のハゴロモです。
外来のハゴロモは一種ではなく、複数が確認されていますが多くがチュウゴクアミガサハゴロモと推測します。
外来ハゴロモと見た目が似ている在来のハゴロモも存在しています。
バラに対しての害は、チュウレンジのような切れ込みの産卵痕、カイガラムシやアブラムシのような吸汁による衰弱や排泄物によるすす病があります。
バラだけでなく、多くの植物を利用します。
白いフワフワの虫が1匹いたところで「外来ハゴロモ!滅すべし」とするのはよろしくないですが、たくさん群れていたりするとカイガラムシやアブラムシと似たような症状が出てしまうため、たくさんいた場合には捕殺するか殺虫剤の使用を検討してみてください。
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